フクヤマは、現在は製造を終了している国産ピアノメーカーです。昭和期には比較的多く流通していたため、これまでにも調律、修理する機会はありました。
このピアノは、仙台市太白区のご家庭に長年置かれていました。
お客様が子どもの頃に買ってもらい、10年ほど弾いた後はおよそ40年間ほとんど触れられずにいました。
親に買ってもらったピアノという意識が強くなり、きちんと手を入れてもう一度弾ける状態にしたい、ということでご相談をいただきました。
ピアノの状態を確認した際の状況
実際にピアノを拝見し、全体の状態を確認しました。
・音が出ない鍵盤が3〜4鍵
・その他の鍵盤も、戻りが非常に悪く重い
・音程の狂いは大きいものの、音量があり、しっかりした響きが感じられました
音程は大きく狂っていたのですが、触れた瞬間に「このピアノはまだ鳴る」と感じました。状態は決して良いとは言えませんが、手を入れていくことできちんとした音が引き出せる可能性を持ったピアノだと判断しました。
今回行った主な作業
今回は調律に加え、主に部品交換とハンマー整形を行いました。
・センターピンの交換(約200本)
センターピンは、アクション内部で部品同士をつないでいる関節部分の軸となるピンです。動きが重くなっていたため、交換することで鍵盤の動きが大きく改善しました。
・全ハンマーの整形
ハンマーは弦をたたく羊毛製の部品で、長年の使用により形が崩れていました。整形を行い、音の立ち上がりと音色のばらつきを整えています。
アクション全体の微調整も丁寧に行いました。弾いた時のタッチや音の安定に直結する部分です。
このような作業では、アクション部分のみを1〜2週間お預かりして作業を行います。ピアノ本体は移動させず、そのままの状態で対応できます。
古いセンターピンを抜いて、新しいセンターピンと交換
部品を全て外して関節部分の動きを点検し、動きが悪い部品を交換します。このピアノは約200本交換となりました。
木製部品の反りを、専用のコテで加熱しながら修正します。こうした調整により、音のまとまりや音色が大きく改善します。
フクヤマピアノの丁寧な作りについて
上前板の裏側には、反り防止のためのL字金具が取り付けられていました。このような加工が施されているピアノは多くなく、普段は全く見えない部分です。当時いかに丁寧に作られていたかが伝わってきます。
また、フクヤマのピアノは象牙鍵盤が多い印象がありますが、このピアノも象牙鍵盤です。象牙の独特な滑らかさは、年月による変色があっても失われません。
なお、象牙は現在輸入が禁止されており、こうした鍵盤は今では新しく作ることができません。
このような修理、再生の場合、調律を含めて10万円前後で行うことが多いです。状態によって内容は変わりますが、事前に作業内容と費用をお伝えしたうえで、ご了承をいただいてから作業に入ります。
作業前は鍵盤がとにかく重く、負担を感じる状態でしたが、調整後は無理のない、自然なタッチに仕上がっています。お客様にも喜んでいただき、「これからピアノ教室に通ってみようと思います」とお話しされていました。
